院生日記

大学院生が綴る日記。日々考えること、お出かけした記録など

授業者のスタンス

 

授業者の新しいスタンスを提案したいと思います。前回に引き続き、アイディアのメモです。

 

これまで社会科において、授業者は授業の発問役、聞き役、フォロー役を求められてきました。これらの役割には、ある知識を教える教師ーある知識を教わる児童生徒という前提があるように思われます。

例えば、ある社会科の授業でごみについて扱うとします。それぞれの役割を具体的に見てみます。

●発問役

<授業の学習課題>ごみを分別するよさはなんだろうか。

 ●聞き役

児童「同じごみを集めたほうが処理しやすい」

授業者「なるほど。でも同じって言っても、ティッシュとペンは別物だけど同じ燃えるごみだよね。」

児童「リサイクルできる缶とかペットボトルは分けるけど、燃えるごみは全部同じでも良い。」

授業者「リサイクルという言葉が出てきたね。」

(授業者の心の内としては、授業のまとめで使えるキーワードを拾っておきたい。)

●フォロー役

躓いている児童生徒に対し着目すべき点を提示したり、キーワードを授けたりする。

 

授業者側には、1時間の授業で達成すべき目標が想定されています。そしてより多くの児童生徒があたかも自分で考えてその答えに到達したかのようなお膳立てをします。こういった授業が成立するのは、知っておくべき知識があるときです。

しかし、知っておくべき知識を授ける授業の他に、これからは答えのない問いに挑戦する授業も増えてくると予想されます。そうした時に授業者は想定される答えを限定することができません。かといって、オープンエンドで毎回終わらせるのも心許ないと思います。私の修士論文では、ある地域課題に対する解決策を生徒が考えるという授業を実践する予定ですが、生徒に意見を出させっぱなしも嫌ですし、かといって地域課題を解決する パーフェクトな答えはありません。そうしたときに授業者は研究者としてふるまうことが良いのではないかと考えました。すなわち研究者モデルのていあんです。

 

研究者には、これまでの研究成果を踏まえながら、ある研究領域の中でまだ解き明かされておらず、かつ解き明かされるべきだと考えられる問題に対し、解決策の提案を求められます。そしてその提案の有用性を実証し、研究の成果と課題を明らかにします。これらをまとめると研究は新規性・有効性・信頼性が求められているといえます。

 

授業において、授業者は児童生徒ともに研究するというスタンスをとるとどのような良さがあるのでしょうか。例えば、未解決の問題を解き明かす手順を児童生徒は学べるかもしれません。何が問題なのか、先行研究はどのようなものがあるか、どのような新規性のある提案ができるのか、提案を実証した結果その提案は有効性があるのか。こういった手順を児童生徒は学ぶことができます。この授業の場合、一定の解に到達することがゴールであり、完全な解にたどり着くかなくても良いことになります。そもそも完全な解はありません。それでも提案した内容についての検証や考察は必要になりますから、オープンエンドで終わることはないと思います。授業者側は児童生徒からの提案の論理的整合性を検証したり、提案内容が十分練られているのかを検討することが求められます。

 

現段階ではこのように考えています。考え方としては小西正雄先生の「提案する社会科」の授業に通ずるものがあると思います。「提案する社会科」とどのような違いがあるのかはまた今後考えていきます。