院生日記

大学院生が綴る日記。日々考えること、お出かけした記録など

境界を超えつつある日々

 

久しぶりの投稿となります。明けましておめでとうございます。

 

現在修士2年生なので、修士論文を提出し、後日、口述試験を受けるところです。ほとんど12月以降の記憶がないのですが、なんとか論文を書き上げました。今日は修士論文を書いてみての感想と、今後もし研究の場があったらやりたいことを書きます。

 

・あっという間だけど意外と長い2年間

2年間はあっという間でした。論文のテーマを決め、先行研究の批判といった問題の所在を書いた1年目。バタバタしながら授業実践を行った2年目の夏。そしていつまでも終わらない考察、研究の成果と課題。予定では10月頃に書き終わっている予定でしたが、提出日である1月10日まで終わりませんでした。授業実践が終わってから自分に向き合うことを避け続けていたことが原因で、いつまでも書き上がらない状況でした。

でも、2年という期間、ずっと同じ研究テーマを追い続けるのも苦しいものでした。9月頃の学会発表や年度末の論文発行でサブ研究を多くやっていればまた違ったのかもしれませんが、そこまで至らず。人間の最大の発明は締切だ、という誰かの言葉がありますが、自分で締め切りをつくって遂行していける人は何にも代えがたい素晴らしい能力を持っていると思います。修士の内に身につけられなかったことが反省です。

 

・社会科の授業をつくる難しさ

私は地域課題を生徒に考えさせる授業をつくりました。地域の困りごとをユニークな考えで民間の側から解決していくことが、日本の社会問題に対する一つの解決策だと考えているからです。でもこれはあくまで私一人の考えであり、その考えのもと授業をつくって生徒に対しやることに恐怖を覚えました。そこで私は思考が止まってしまい、なかなか授業をつくることができませんでした。本当に地域課題って生徒が考える必要ある?とか、日本の地域が選択と集中を進めた結果、選択されなかった地域に希望はあるの?とか。共通理解が得られなければ論文としてもだめなわけですが、それは私個人が修士を卒業できないという問題で済みます。でも授業を受ける子供にとって、この考えに触れさせていいのかという怖さがありました。

それは過去の授業や先行研究を調べる中でも感じていました。社会科は割と授業者の考えが反映されやすい教科だと思っているので、「それ本当にやった授業なの?」とひやっとする授業もありました。例えば郷土愛の授業で、身近な地域を愛することが正しいみたいな価値観でつくられている授業は結構きついものを感じました。

人々が構成する社会だからこそ、社会科を教える授業者の解釈も多様で、社会科特有の難しさなのかもしれません。系統的な学問として確立している数学科や理科であれば教え方の相違はあれど、行き着く定理や証明は絶対的なものがあります。一方、社会科は系統的に教えるか、経験的に教えるかという二分があったり、社会認識を授けるものなのか育むものなのかとかいった論争が論争を呼ぶ感じになっています。私の場合、大体の問題はバランスの問題だと考えていますが、余計な口出しをすると各方面から色んな議論が飛んできそう、という感覚です。議論はいくらでもしたいのですが、思想や価値観のレベルで共通理解が得られないと厳しいです。

色んなものを鮮やかに飛び越えて素敵な社会科の授業がつくれるようになりたいものです。

 

・私の授業観

私は基本的に、児童生徒が問題を解決できる人間になるにはどうしたらいいかという発想でつくっていると思います。よりよい社会を作っていくには、人々が問題を解決していく必要があるからです。でも苦しいのは、「問題を解決する」という言葉は一見何かを指し示している言葉のようで、何も指し示していない言葉であるということです。問題自体は無数に様々な規模で存在し、その中から児童生徒のために授業者が問題を切り出す必要があります。でもその時点でデフォルメされてしまっていて、何かを学ばせるための学習問題になっています。本当に児童生徒が問題に直面した時に、それを乗り越えられるような能力ってつくんだろうか、よりよい社会をみんなでつくっていこうって気持ちになるんだろうかと思います。

もっと生の現実にあるカオスな問題を児童生徒とともに考えられる、そんな授業をいつかやってみたいなあ。(デューイの考え方に近いところがあるのかもしれません)

 

・今後もし研究の場があれば研究したいこと

ある問題があった時に、教師はお膳立てをしすぎず、教科の枠にもはめず、多様なルートから問題にせまり、また解決の糸口を掴んでいくようなカリキュラムの開発をしたいです。教科横断型カリキュラムという言葉が適切なのでしょうか。従来、社会科は社会科、数学は数学、音楽は音楽というように教科ごとに授業づくりについての検討が重ねられてきました。それら複数の教科を一つの授業に編成するのは簡単なことではないはずです。従来の総合的な学習の時間での学びを一歩進められるようなカリキュラムの研究を行いたいです。

 

授業で提案できる人間になるために、まずもっともっと授業をつくって日々実践するということをやっていきたいと思います。

 

現在、様々な境界を超えつつあります。決めなければならないことが多く、楽しみつつ大変な毎日です。何枚か脱皮して、次のスタートに立ちたいと思います。

 

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写真は初詣のときのおみくじ。学問は困難だそうです。大いに努力します。